【PR】当ページは広告が含まれています。日本は2009年に大学全入時代(入学希望者が大学の定員より下回っている状態)になり、大学進学率は2019年に53.7%と右肩上がりを続けています。
背景には大学を卒業しないと自由に就職先を選択できないという社会問題もあります。
ここで登場するのが奨学金です。
しかし、奨学金を利用した学生が借金を返済しきれず、最悪破産に至るケースも社会問題になっています。
【参考:奨学金が返済できない時に考えたい4つの事】
このような話を聞くと、奨学金制度の良い面を理解しつつも、非常に怖い制度であると感じます。
奨学金は「どのような計画で返済するのか」「誰が返済するものなのか」が曖昧なまま利用される方が多いように見受けられます。
最近の奨学金問題に巻き込まれないためには、事前に奨学金制度を知ると共に、どのように返済するか考えておく必要もあるのではないでしょうか?
奨学金のイメージは、成績が優秀でも経済的に恵まれていない学生が、国から支援を受けて大学に通えることを連想しますが、そうではありません。
基本的に奨学金とは学生ローンなのです。その制度を両親や本人も理解してから利用する必要があるのです。
奨学金は返済不要と返済しなければならないものがある
奨学金は、大別すると「給付型奨学金」と「貸与型奨学金」の2つに分かれます。
「給付型奨学金」とは返済が不要な奨学金です。利用するには世帯年収などの要件があります。
「貸与型奨学金」社会人になってから返済しなければならない奨学金です。
更に「貸与型奨学金」は無利子のものと、有利子のものに分かれます。最近の奨学金の殆どは有利子のものです。
奨学金問題が大きくなった主な原因の一つに、返済が苦しいといったお金の面があります。
過去、奨学金といえば日本育英会という機関が運営していた無利子型が中心でした。
しかし無利子型の奨学金を利用するにはいくつかの要件があり、高校・大学に進学する希望者が増えるにつれ、制度の必要性が高まってきて、有利子の奨学金が増えるようになったのです。
当然、有利子の奨学金は給付型や無利子のものと比べてコストが高くなります。
しかし無利子型より利用しやすい事が功を奏し、大学進学率の向上に寄与することとなりました。
つまり有利子の奨学金は、国内の教育水準向上に大きく貢献してきたのです。
現在の奨学金は、独立法人日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金の有利子型がほとんどになっています。
奨学金の目に見えない利子の怖さ
利子とはお金を返す時に、元金とは別に支払わなければならないコストのことです。
普通のローンでもそうですが、お金を借りて返済するとき、借りた額全額を一度に返済することはあまりありません。長期間にわたって毎月少しずつ返済していきます。
このときに発生するのが利息です。利息とは毎月少しずつでも合計するとばかになりません。
仮に利息3%で100万円を3年で返済したケースを考えると実に約4万5千円もの利息が発生します。借り入れ期間が長くなるほど利息も増えます。
これが目に見えない利息の怖さです。
有利子型の奨学金を利用すると言う事は、学費のお金とは別に、「返済するだけの時間」を借りるということなのです。
ローンとしての奨学金特有の問題
奨学金は以前は一部の学生だけが利用するものでした。しかし最近はごく当たり前のものになっています。
奨学金は学ぶ意思を大切にする制度です。しかし利息とともに返済の義務がある意味では、マイホームや自動車を買う時のローンと同じなのです。
しかし、普通のローンと違い、なぜ奨学金問題は大きく取りざたされるのでしょうか。
それは次の3つが複雑に絡み合っているので問題が根深くなっているからなのです。
- 学費は誰が負担すべきか|本人?両親?国?
- 奨学金制度を運営する側のリスク
- 奨学金制度を利用する側のリスク
もう少し詳しく説明していきます。
学費は誰が負担すべきか|本人?両親?国?
学費は誰が負担すべきでしょうか。サービスを受けるのは学生ですが、日本では親が負担する考えが一般的になっています。
現在の奨学金は有利子の奨学金が一般的です。
親の経済力だけでは奨学金の返済が難しくなってきています。理由は①国内の平均所得の減少②学費の高騰などがあります。
私の友人で、自分で奨学金を支払っている方がいます(現在30代)今も奨学金を支払っています。あと25年支払う必要があると言っていました。ある意味、住宅ローン並みです。
一方、ヨーロッパの事例では本来学費は国(税金)で負担するという考えもあります。反対にアメリカは学費を税金で負担しませんので、日本より事態は深刻です。
アメリカのように学費は全て自力の場合、仕事をして、お金を貯めてから大学に通う学生もいます。しかし、世界的にも学費の高騰は騒がれていて、学費の支払いのために居住費すら確保できない学生もいてアメリカの社会問題にもなりました。
学校内に寝泊まりする学生や、食費を確保できない学生もいるようです。これを解決したいと考えた大学が食品企業と提携して、賞味期限の近い食糧を企業から譲り受け、学生に無料で配るという取り組みも開始されています。
反対にヨーロッパのように全て税金で賄うモデルにすれば、日本の場合消費税は30%を超えるでしょうし、所得税、住民税などの税率も上がり『なぜ学生のために税金が高くなるんだ!』という不満も出てくるはずです。
学生も親も国も経済的に厳しくなった場合、奨学金の返済は誰が責任を持つのかという問題がでてきます。
議論が行き過ぎると、責任のなすりつけ合いになるのが奨学金の特徴でもあります。
奨学金制度を運営する側のリスク
「奨学金」という言葉は、選抜に選ばれた優れた学生あるいは研究などを援助する制度を連想します。現実は多くの一般学生が利用する学資ローンです。
そして、ローンであるという現実を見えにくくしているのが「奨学金」という言葉です。
普通のローンは、金融機関の審査でOKとなれば利用できます。審査では、勤務先、収入、家族構成、借りているローンなどすべて調査して、借入上限額が決められます。
場合によっては担保が必要です。
奨学金は社会人になってから返済します。よって、利用にあたっては審査というよりは要件チェックがOKかどうかだけです。
社会人になって、どのような企業に勤めるのか、年収がいくらなのか、そもそも正社員として就職できるのか誰にもわかりません。
つまり、奨学金制度を運営する側はリスクが算定できません。金融業の立場からするとリスクが算定できないローンというものはあり得ません。
どれくらい貸倒の可能性があるかわかりません。これが返済を困難にしている原因の1つになっていることは間違いないでしょう。
奨学金制度を利用する側のリスク
奨学金問題は、返済の滞納が増加していることも大きく取りざたされています。
これは、奨学金の延滞が年々増加していることを政府が危惧し民間の取り立て業者を使ったり、長期間の延滞者は個人信用情報に事故者として登録され、若いうちから日常生活に支障がでる等の事例も紹介されています。
民間の取り立て業者を使うということは、延滞者の返済に対する意識が希薄だからです。奨学金だからといって「出世払い」ではありません。
大学を出れば立派な企業に就職できる時代ではなくなりました。
大学進学率が高い今、進学の目的と、返済計画を明確にする必要があります。無計画のまま利用するのはリスクが高すぎます。
就職できなかったとき、どのように返済するかまで考慮しておかないと、奨学金問題に巻き込まれる恐れがあります。
就職しても思ったように給与がもらえないのか、親からの援助が無いのか、そもそも進学する以外の進路があったのではないか、奨学金問題は人によって異なるのです。
問題の本質がどこか見極めが必要なのです。
大学進学前に知っておきたい奨学金のこと まとめ
今回は、奨学金の社会問題をテーマにしましたが、奨学金の制度自体は素晴らしく、継続してもらいたい制度です。
将来、医者になりたい、国家公務員になりたい、日本の有名な企業で働きたいと思ったとき学歴はどうしても必要です。
学びたい気持ちがあっても、お金がなくて大学にいけないのは悲しいです。
奨学金は返済する義務があることを理解して、正しく利用するのが正しい利用方法です。
奨学金は、ほぼ無審査で学費を貸し付けている制度に問題があるのです。要は未成年のうちにオーバーローンの借金契約をしているのです。
例えれば、時給1,000円のアルバイトに1,000万円貸すようなものです。奨学金の返済は20年、30年というケースも多く、十分な収入がなければ人生の半分の期間、奨学金の返済を続けなければならないのです。
ここでは返済シミュレーションなどの詳細は省きますが、返済で苦しくなることが初めから分かっていることも多いのです。
奨学金の契約をする前にJASSOが返済シミュレーションを本人に提示するとか、何十年返済が続くことを説明すれば奨学金不幸は少しでも減るのではないでしょうか。
『毎月6万円ずつの返済で30年間返済が続きます』と言われれば思慮深く契約をするはずです。
計算はしていませんが、大卒で奨学金の返済がある学生と、高卒で無借金の学生の可処分所得はどちらが上なんでしょう?
この場でJASSOを批判しても問題解決になりませんし、それなら借りる側が金融リテラシーを身につけて、お金を借りる前に考えていきましょうということです。